NAKADIA

NAKADIA

タイ東北部イサーン地方の農家の娘として生まれ育った Nakadia。電気も水道もない自作の家で、1日1ドルにも満たない生活を送りながら幼少期を過ごした彼女は、その頃から現在まで変わらぬ、底知れないエネルギーを持ち続けている。

決して恵まれた環境ではなかったものの、幼少期を振り返る彼女の瞳は今も輝いている。当時、彼女自身は何ひとつ不足を感じることなく、幸せな日々を過ごしていたからだ。その「生きること」そのものへの純粋な喜びは、世界的アーティストとして地球を飛び回るようになった現在も変わっていない。

幼少期から世界的な成功を手にするまでの道のりは、長く困難なものだった。その転機となったのは2002年、友人に誘われて初めてヨーロッパを訪れた時のこと。最初の夜に出会ったテクノに衝撃を受け、彼女は瞬時に確信した。
「これこそ私が探していたもの。私はDJになるために生まれてきた!」

そこから激動の旅が始まる。理想のサウンドを追い求め、2003年にはタイのサムイ島へ移住。観光地として世界中から人々が集まるこの島で DJ を始めると、驚くほど短期間のうちに国際的なキャリアへの扉が開かれていった。

メインストリームが中心だった当時のタイで、誰からの指導も受けず独自にサウンドを磨き上げ、母国のアンダーグラウンドシーンを切り拓く先駆者の一人となると同時に、世界へと活動の場を広げていった。

一方、その道のりでは偏見とも日々向き合わなければならなかった。男性中心の音楽業界で「小さくてかわいいタイ人の女の子」と軽視されることも少なくなかったが、そのたびに実力で自身の存在を証明してきた。困難に直面してもポジティブなエネルギーと笑顔を失うことなく、キャリアの扉を開いてくれるような後ろ盾もない中、自らの力でひとつひとつのマイルストーンを築き上げていった。

2010年には、増え続ける世界各地でのツアースケジュールによりタイを拠点に活動することが難しくなり、ベルリンへ移住。2022年末までに世界78カ国、1,800公演以上を達成している。

これまでに Tomorrowland、Love Parade、Loveland、SonneMondSterne、Parookaville、Nature One といった大型フェスティバルをはじめ、ベルリンの Watergate、Tresor、Sisyphos、サンパウロの D-Edge、ロンドンの The Egg、アムステルダムの Marktkantine、オーストラリアの Rainbow Serpent Festival など、世界各地を代表するクラブやフェスティバルに出演してきた。

2013年夏、Sankeys でのパフォーマンスをきっかけに Yann Pissenem に見出され、その後はイビサでも確固たる存在感を確立。Ushuaïa、Amnesia、Sankeys、Zoo Project、Blue Marlin などの人気スポットに定期的に出演するようになる。

プロモーターとしても、母国タイで自身のパーティー Nakadia Welcomes を開催。伝説的 DJ Sven Väth をタイ各地で計7回招聘するなど、同国のクラブシーンにおいて歴史的な実績を残している。

DJ として世界中を飛び回る一方で、自身のサウンドを制作することへの強い思いを持ち続けていた。しかし、多忙を極めるツアースケジュールによって、スタジオワークに十分な時間を割くことは難しかった。2008年から2016年にかけて発表された初期作品では、その才能の片鱗を見せ、2018年には本格的に卓越したテクノトラックを発表するようになる。

2019年初頭には Filth on Acid から EP をリリースし、Beatport のテクノ・リリースチャートで2週間にわたり TOP 10入りを記録。この EP は彼女にとって新たなキャリアの幕開けを告げる作品となった。同年6月には Carl Cox が自身のレーベル Intec から EP をリリース。その後も Set About、Codex などのレーベルからコンスタントに作品を発表している。

2020年初頭、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界が大きく変化し始めた時期には、ストリーミングが日常化する以前から、数百万人が視聴した初期の大規模ライブストリームに参加。ベルリンの自宅から Mr. Afterparty 初のストリーミングマラソンでヴァイナルオンリーセットを披露し、そのわずか2週間後には第1回 Beatport ReConnect にも出演した。

積極的なオンラインパフォーマンスによって SNS のフォロワーも急増し、世界各地の音楽業界関係者から改めて唯一無二のアーティストとして注目を集めることとなった。

さらに、この時期にようやく自身の壮絶な人生を文章にする時間を得て、2021年3月には自伝 Positive Energy を出版。そのストーリーは DJ コミュニティのみならず幅広い層からさらなるリスペクトを集め、ハリウッドからも注目を浴びることとなった。

2022年末の時点で、その勢いはかつてないほど加速。ラテンアメリカ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを絶え間なく飛び回り、各地でソールドアウト公演を重ねている。ツアースケジュールは半年先まで埋まり、アジアを代表するテクノアーティストの一人として、さらなる飛躍を続けている。